かつての山の営みを今に伝えるシナ布。樹皮から布が作られるということ自体が、現代の私たちにはなかなか想像しにくいものかもしれません。明治の頃までは食べ物よりもむしろ衣服をいかに賄うか、ということの方が生き死にに直結していたそうです。水にも強く強靭で質実剛健なシナ布は衣服から笠、前垂れ、運搬具、そして寝具に至るまで、ありとあらゆるものに使われていました。シナ布つくりは伐採から糸作り・織までの作業に1年を要し、雪深い山の生活に密着して行われています。裂き織りは貴重な布地を無駄にしない知恵から生まれた技法で、シナ糸を用いた裂き織りも古くから受け継がれてきたものだそうです。大麻布やアイヌのオチョウ布、葛布、苧麻布などの自然布と呼ばれる布の中でも、特に貴重なシナ布。エフスタイルの取り組みの中では、民俗学的な見地からも高く評価もされています。こういうモノが身近に入手できることは、とても素晴らしいことだと思います。雪がよく似合うシナの裂き織ねじり袋。アンギン編みよりは比較的入手しやすいので、機会があればぜひ一度手にしてみてください。